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◎第15話『枝垂れ櫻』の作品掲載&〈小説の書き方〉講座(15)

今作品『枝垂れ櫻』は、またもや〈擬人法〉を用いた名作になりますよ。

全編を通して、主人公の『櫻』が一人語りをしていく――という手法です。

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先ずは、自分の歴史=過去を語ります。

住職の嫁として関わった「娘さん」や「雅代さん」が登場しますよ。そして、雅代さんの話は、日本の戦争・敗戦の歴史へと重なっていきますね。

(事実、作者である「こちさ」さんが幼い時に、召集令状が来たお父様は南方で戦死されたそうです)

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次に、今=現在。

平和が訪れたが、自分の老いを感じるようになった「今」の状況を語り、これが「書き出し」と“意味の繰り返し”になって繋がっていきます。

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さらには、四季。

「秋の私」→「冬一番」→「年が明ける」→「待ち遠しい春」。このように秋から春にかけての季節を描いています。

あれ、「夏」が抜けている?

そこで、前のところをちょっと読み返してみてください。

「国中の人たちが~やっとの日々だった」と書かれている部分です。これが、日本の敗戦(8月15日)直後の日々であり、まさに季節は「夏」そのものなのですよ!

どうですか。

作者は、ちゃんと全体で「一年(四季)」を描き切っていますよね。

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ラストは、未来。

「一人娘が初孫を連れて帰省すると聞く」という表現なので、まだ今は帰省していません。

だからこそ、「みんなが集う『春の開花』」は、この先のちょっとした未来になりますよね。

ラストが「未来」で終わっているからこそ、読者に読後感の良い印象を与えるのです。

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以上を見ていくと、「過去」「現在」「未来」の“時間軸”を意識した全体の構成で作者がストーリーを作り上げ、見事に描いてラストまで読者を導いていることが理解してもらえると思います。

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そこで、もう1つ。

「仕掛け」が施されているのを明かしましょう。

つまり、作者は作品全体を貫く「キーワード」を、読者にバレないように、それとなく書き込んでいるのです。

とある一対の「対義語」なのですが、何だかわかりますか?

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それは「生←→死」。

「子が出来なかった」「男の子は~この世を去った」(死)←→「年末に産まれた初孫」「新しい生命との出会いが、年老いた私を長生きさせる」(生)。

この対義語が、作品のテーマを“奥深い”ものにしていますよ。

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たった「原稿用紙4枚(1600字)」でも、これだけの多種多様な、それでいて面白く・奥深い「世界観」や「ストーリー」が描けるぞ~!

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このことをユーチューブ動画の「15作品」を配信し、実証してきましたので、皆様にわかっていただけたら本望です。

そして、一人でも多く「私も4枚小説を書いてみたい!」という未来の作家を、ここから生み出していきたいと願っています。

「4枚小説」創作クラブ 主宰 丘辺 渉

wataru44okabe@gmail.com