「4枚小説」作品『天国に行く人間は誰だ!?』


『天国に行く人間は誰だ!?』
SOLA
 ここは天使こども学級。見習い天使が、天使の使命を学ぶ場所。
 もうすぐ鳴る鐘を合図に実技テストが開始される。【天国へ行けるのはどんな人間かを考える】という課題だ。
「あれが人間の世界かぁ! 楽しみだな~」
 今、エミルは初めて見る景色を雲から見下ろしている。『たてもの』という沢山のブロック、『みずうみ』という水たまり、くねくね広がった『みち』を順に眺め、最後に小さく見える、沢山の生き物たちを見つめた。
 初めて行く世界に不安を隠せない見習い天使たちをよそに、エミルは満面の笑み。
「わくわくするな~、早く! 早く!」
 鐘が鳴り、一斉にこどもたちが人間界を目指した。エミルは誰よりも早く、一直線に下降する。風を切り、厚い雲々を切った先に、その世界が広がった。

 人間に天使は見えないので、驚かさぬ様触れてはダメ、というテストの約束事を守る範囲の距離までエミルは人間たちに近づいた。
「うわぁ、本物の人間だぁ!」
 喜びながら教科書を広げるエミルの横を人間が通った。もふもふの何かを連れている。
「……『おんなのこ』、と……『いぬ』?」
 人間は『いぬ』の世話をすると、開いたページに載っている。
「生き物の世話をする人間が天国へ行けるのかなぁ?」
 エミルはあとを追いかけた。その途中で『おんなのこ』は別の人間とすれ違い、何かを手渡された。
「『おじいさん』が……『あめだま』、くれる」エミルは教科書で確認する。
「物をくれる人間も行けそうかな」
 その後『おじいさん』は動く箱に乗った。別の人間に声をかけられている。
「……席ゆずる、『だんせい』。うん、この人間も要チェックだね」
 箱から降りた『だんせい』は良い香りのするブロックに入った。教科書にある『はな』の束を買っている様だが、相手と喋りながらほっぺを赤くしている。
「相手は……もしや『びじん』という人間だろうか」
 長老の講習で、きれいな人間を『びじん』と習った。そして、それは天国に行ける人間候補と言っていた事を思い出し、エミルは追う人間を変えることにした。
『びじん』がブロックから出たのは日が傾いた頃。暫く歩いていたが、途中で誰かと合流し、一緒に動く箱に乗った。教科書を見るに、『おばあさん』と呼ばれる人間だ。
「楽しそうに話してる。……『びじん』の知り合いだし、天国候補、かなぁ?」
 考えている間に動く箱が止まった。目の前には明るい色のブロックがある。2人が箱を降りていると、ブロックの中から誰かが近づいてきた。
「『えぷろん』、している……『おかあさん』ってやつだ! 迎えにきたんだ」

 2人が「ただいまー」と言うと、ブロックからあの『おんなのこ』と『おじいさん』が姿を現した。そして『はな』の束を買った、あの『だんせい』もここに帰ってきて、『あかあさん』にそれを渡している。
「あれれ? 僕が会った人間達は家族だったんだ!」
 エミルは笑顔いっぱいの人間たちを見て気持ちがほっこり、自分の家族を思い出した。
「うん、わかったぞ。家族を大事にする人間が天国へ行くんだ!」

 エミルは満足に頷き、雲の上に帰って行った。課題の答えを披露したエミルは、先生から、長老から、そして家族から褒められ、優しく頭をなでてもらった。
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